Sing Smile Essence

今日しかない。

今日は、
私用があって
私は、
年休をとった。


その私用は午後３時には
かたがつく。

・・・・。

今日しかチャンスはない。

行くべきか
行かざるべきか
悩んでいる間に
この足よ、
前に進みなさい。


目指すは
あの場所へ！


自動ドアを通り
中へ入った。

できるかぎり、視界を広く意識して
窓口を見た。

私は
刑事でも、探偵でもないが
探している『ある人達』のために
用もないのに
この、銀行に来ている。

もちろん、
こんな探偵みたいなことをするのは初めてだから
心臓はバクバク。
不審者に見間違われたらどうしよう。
（ある意味、完全に不審者だけど）
どうか、
フロアー担当の
ベテラン行員様、私に気づかないでくださいませ。


何気に
近くのソファーに、腰をおろしてみた。
雑誌を手に取り
何気に
ページをめくる。
うん。いいぞ、この調子。

雑誌を読むふりをして
何気に
窓口カウンターを見た。
先ほど、中に侵入、いや、入ったときは
確認できなかったので
今度は
落ち着いて
ちらーっと
窓口嬢をチェックした。

ら

あ、やっぱり。
いらっしゃいません。

なぜ、『やっぱり』なのか。って？
最近、とんと見かけないのですよ。
『彼女』の方を。

笑顔の初々しい、あの、職場の花であろう『彼女』の姿が、
いつもの時間、いつもの道に見えないのです。

一体どうしちゃったんだろう。
心配しちゃうじゃないの。
ある意味、彼女と私は、もう他人じゃないのよ。（？）
と、
私は意を決して
この場所にきたのですが。


『彼女』はいませんでした。

がっかり。

あ、でも、まだ任務は残されている！
（誰に頼まれたっていうのよ。）
第１の男と、第２の男を確認せねば！

私は、も一度、窓口を見た。
男子行員は、奥に位置しているので
よく見えないなあ。
心なしか、座高と首をのばす私。
その直後

「お客様、番号札は、お取りになりましたか？」

びっくりして
声のする方へ顔を向けた。
その、あまりのリアクションの大きさに
声をかけた
お上品なフロアー担当の行員様も
驚きになられた。

これは、やばい。

変だと、思われる。

私は言った。

いえ、
私は、
お金をおろしに来たんですけど・・・。

「でしたら、ATMの方が、手数料がお安くなりますよ。」

ああ、
そうですよね。はい。
どうも。


私は
雑誌を慌てて片付け
勧められるままに
ATMコーナーに並んだ。

なんだか
背中に視線を感じる。

ATMの機械的な女の人の声の
命令通り
お金をおろした私。

この銀行には口座もないのに～！
余計な手数料、払っちゃったじゃないの～！


目的を達成できぬまま
すごすごと帰る、
C級探偵。
あ～あ、
誰か、代わりに情報をください～。

　　　　　　　注　今回は、全くのフィクションで～す。ごめんね。